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劇場版天元突破グレンラガン紅蓮編(バレ有)

見てきた。





以下、劇団☆新感線好きの、という注釈のつく、超gdgd感想。劇場版とTV版のバレ話入ります。要注意。







(脚本担当の中島)かずきさんはクセのある脚本家だよね、というのが私が常に言うことで、というのは、めっちゃくちゃ面白いんだけどアクが強いからなまじの演出家だとイメージで負けるっつーか。前に(稲垣)吾郎ちゃんがやったお芝居を見に行った時に痛切に感じたことなのだけれど。月晶島綺譚、だったかな。でも人形(たしか杉村ジュサブローさん?)と踊るシーンとかは綺麗だった……ってうろおぼえのお芝居の話してもしょうがないよね。話の(ある意味)トンデモさを演出がこなしきれてないなぁと、演出がかずきさんのトンデモさを力尽くでねじ伏せるくらいの、いやその斜め上を行く勢いのある何かでないと、この人の脚本は御しきれないんじゃないかと思ったことがあって。
そんなことを常々考えていたのでやはりこの人には盟友いのうえひでのりとのコンビしかあり得ないんじゃないかなーとか思っていたのですけど。そんなことを考えながら特撮のスポット脚本とかを見ていたのですけど。リスペクトするだけじゃなくてね、斜め上をいける勢いと力のある人を、とね。
だけれど、1年前、TV版の「天元突破グレンラガン」を見て。
ああ、この人は別の盟友をもったのだと、そう思ったのでした。こころから、しみじみと。


で、内容。最初いきなり(この時点では全く関係ない)上川(隆也)&(池田)成志語りから入るあたり、ああ、”あの”1話アバンの”塗り直し”──上書きなのね、という。そして噂で聞いていたとおり、前半は1話及び8話がほとんど丸ごと入るこれでいいんですか展開。……というか、シモンたちの出発だから1話は外せないのが当然なのか。
にしても、(繰り返し繰り返し見たからわかるんだけれど)ほとんどTVのカットつかってませんか、いや、嬉しいですけど。予想外にめっちゃ嬉しかったですけど。どの表情もどの声も、自分の脳裏に焼き付けられ馴染んだそれ、そのもの。1年ぶりの映像が音声が、私の体温を1度また1度と上げていくのを感じてた。ハンカチを口にあてて、ただひたすらため息をこらえてた。
嗚呼、わたし好きだ。このアニメーションが、この物語が。ちくしょう、悔しいなぁ。こんなに好きだったっけか……。


そして怒濤のごとく2話3話を駆け抜け、一転して台詞無し音楽のみのの4〜6話まとめ。獣人の本拠地を探し旅をする4人+アルファのデコボコ道中。あのやたら長いタイトルのラップが、そのからっとした描き方に絶妙にはまるんだなぁ。岩崎琢さんは、本当にいい仕事をしたと思うよ。物議を醸した4話も、一転して重厚な5話も、馬鹿っつーか新感線流に言うならおポンチと、繊細な感情表現の6話も、みんな、先へ繋げるための種まきをしていたんだなと思う。


そういえば最初の頃、派手な、かずきさん得意キャラのカミナがどうしても話の中心にみえたんだけれど、今回はちゃんとシモンが主人公に見えた。台詞やシーン、カットを整理するだけでこれだけ変わるのか、としみじみ。
ただ、……そうだな、「阿修羅城の瞳」2003年版のときにおもったのだけど、2000年版*1の(あるいはこの場合グレンラガンTV版の、つまりリライトする前の)脚本には、疾走し暴走する物語とその中で息づく無駄に多い登場人物達のカオスが、いつもどこか生々しく息づいている気がする。そのカオスっぷりや生々しさがいつも私の体温を上げるし、つまり、好きで好きでたまらない……んだな。私。
「SHIROH」がいつか再演されるときもそう思うんだろうな、話と登場人物が整理されて、わかりやすくなって深くなってあらためて感動すると同時に、でもどこか、懐かしむ気持ちをもっちゃうんだろうな。
つまり、TV版を毎週正座するようにして見ていたときほど、体温は上がってなかった、と思う。


ただねぇ、すっとばしちゃうけど、やっぱ後半は面白かったですよ。ええ。カミナ後ニア登場あたりからオリジナル展開になってきて、おお、ヴィラルぶん殴りがそこに入りますかとかさ、そういう”料理の仕方”ももちろん面白かったですけど。
ええ、やっぱクローズアップされた女の闘いが。
ヨーコとアディーネの”お色気対抗白兵戦”は言わずもがな。あらかじめ聞いてたし、パンフでかずきさん自身が語ってたし。
それより個人的には、ニアが。ニアの台詞が増えて、逐一その時点での悩みや考えを語っていたのがとても興味深かった。多少「こんなにしゃべる子だっけ?」みたいな首かしげる部分はなきにしもあらずだけど……かずきさん苦手そうなキャラではあるよね(汗) もうちょっと、ニアらしい語彙や言い回しがありそうな気がしたけど、とだけは言っとく。でも、それでも、絶対だった父に対して疑問を持ち、ひとりの人間としてスジを通していこうという、ふわふわほよほよ娘というだけではないニアの芯の強さは、かずきさんらしくよく出たと思う。この芯の強さは後半、というか最後の最後まで引っ張るものだしね。前編できちんと打ち出せたのは、後編に繋がったんじゃないかな。これはヨーコ──後のヨマコも同じということで。


シモンの初口上はちょっとかっこよすぎな気がしたけど、みんなはそうでもないのかな?あの口上は、というかかずきさんの口上は、どーしよーもなくダサいものを”道理を蹴っ飛ばす”勢いで見るものをねじ伏せて「ごめんなさいかっこいいです」と言わせるクチだから(……なんつー表現だ)、またこれはシモンがあふれ出す思いを口に出してケリをつける場面だから、やっぱりまだ”情けないシモン”のままで言って欲しかったなぁというか。
でも、あの、ドリルを使って生身で登っていくとこはちょっとじーんとしたなぁ。あ、あれ宮崎アニメへのオマージュだろうか?パズー思い出した。
全員で口上は、妹の人曰く「声が重なると聞こえにくくなるよね、できれば2〜3人程度が望ましいんだけど」。ちょっとナットク。でも、あの突き抜け方はかずきさんらしいなぁ、とニヤリ。
音のいい劇場だとまた印象がだいぶ違うのかな。これは「ロード・オブ・ザ・リング」でさんざん身に染みたことだけれども。


さて、意外なことに螺旋王池田成志のアヤシゲ黒幕な台詞で終わっちゃったんですけど、……後編の螺巌編はどれだけ怒濤の展開にしてくれるのか、ちょっと楽しみ。なんとなく今の予想では「ぇぇぇぇぇぇ?!TV版はどこいっちゃったの?!」ってくらいにかっ飛ばしてきそうな気がする……第4部のあたりとかね。かずきさんだし。などと勝手なことを言いつつ、勝手な感想の筆を置くのだ。


一回転すれば、ほんの少しだが前に進む。それがドリルなんだよ。

ドリルでありたい。そうありたい。ちくしょう、かずきさん一生ついてくーーー!

*1:さすがに初演は見ていないので比較できない